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労働に関する紛争

仕事をする上で、一人親方の場合もありますが、多くは人を雇ったり、雇われたりしています。パート、アルバイトを雇うことも多くありますので、全くの1人で仕事をするということはあまりないんではないでしょうか。

使用者と社員はどうしても分かり合えない部分がありますので、それによる紛争が起こることもあります。人間関係ですので、誤解や行き違いでトラブルになることもあります。ブラック企業もあれば、ダメ社員もいるでしょう。労働に関する紛争は、様々なケースが想定されます。

当事務所は、労働者側からのご相談も使用者側からのご相談もいずれにも対応しております。

労働に関するご相談は様々なケースがありますが、大きく分けると、地位に関する紛争、労働条件に関する紛争、金銭請求に関する紛争に分けられます。他にも、労働組合に関する紛争なども考えられますが、ここではこの3つの相談類型について解説していきたいと思います。

1 地位に関する紛争

地位に関する紛争は、労働者の地位の存否に関わるものです。「うちで働いてくれ、ここで働かせてくれ」という労働契約の締結、「おまえはクビだ、こんな会社辞めてやる」という労働契約の終了といった問題です。

労働契約の締結については、雇い主の裁量が大きく、雇い主に採用の自由があるとされます。

しかし、雇い主は、労働契約の締結にあたって、労働者に対して、賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないとされており、いったん明示された労働条件は、原則、契約内容となり、雇い主を拘束します。

雇い主が全く自由に労働条件を変更できるというわけではないという意味で、完全な自由があるわけではないことには注意が必要です。

労働契約の終了については、契約期間の満了、従業員からの退職、雇い主からの解雇などで生じます。

それぞれについて紛争が発生しやすく、特に、雇い主からの労働契約の一方的解約である解雇については、訴訟にまで発展することも多い争点です。

一般に、雇い主は、自由に従業員を解雇できるわけではありません。アメリカでは、雇用・退職はお互いに自由という概念が前提になっていますが、日本では、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当」(労働契約法16条)でなければ、解雇は無効とされます。

ただし、同じ解雇でも、整理解雇や懲戒解雇の場合は別の考え方になります。一概には言えませんが、総じて、雇い主に高いハードルが課されています。

ここでは、従業員からの相談例を挙げてみます。

正社員として営業職で働いています。ところが、会社から、ある日、「もう明日から会社に来なくていい。クビだ。」と言われてしまった、という相談です。

これは、能力不足を理由とした解雇を受けた事例です。ただ、口頭で言われただけでは具体的な理由は不明ですので、解雇理由の証明書を請求することも考えられます。

もし、理由に納得がいかなければ、解雇には理由がないから無効であるとして、任意の交渉や裁判所の手続で争うことも考えられます。

2 労働条件に関する紛争

労働条件に関する紛争は、労働時間、時間外労働、労働場所、休暇、安全衛生、人事など、従業員が雇い主の元で働く上での様々な条件で発生します。

まず重要なことは、個別の従業員と雇い主との労働契約内容がどのようになっているか、ということです。

労働契約内容は、労働契約書、労働条件通知書、就業規則などで規定されていることが多いですが、労働組合との関係で労働協約を定めている場合、労働協約が優先されます。

ただ、実際には、労働条件は口頭での約束、曖昧な内容ということも多く、その場合は実態から推測することになります。特に紛争になりやすく、また深刻な戦いになりやすいので、きちんと書面で作成することをお勧めします。

また、法令(労働基準法など)が定める内容には、強行法規といって、いくら労働契約書や就業規則などで定めても、法令が優先されるものがあります。その結果、従業員に不利な内容で合意していても、無効になる部分がありますので、注意を払う必要があります。

いずれにしましても、労働条件については、就業規則の制定、個別の労働契約締結の段階といった、紛争が生じる前の時点で、疑義が残らないように、専門家に相談されておくことをお勧めします。

また、仮に紛争が起こってしまった場合には、従業員と雇い主どちらの立場でも、専門家のアドバイスを受けていただくことが、迅速な解決につながります。

ここでは、雇い主からの相談例を挙げてみます。

当社では10名の正社員を雇用しています。就業規則は長年変えずに同じものを使っていましたが、最近、全ての社員が同じ賃金体系でいいのかという議論もあり、就業規則を見直すことを考えています。どのようなことに気を付ければいいでしょうか、という相談です。

就業規則を変更、特に、従業員の不利益に変更するためには、内容と必要性の両面からの、変更の合理性が必要とされます。

また、賃金は、労働条件の中でも、従業員の生活に直結する重要なものであることから、さらに高いレベルの合理性が要求されます。

1つ1つの条件を見るだけでは、単純に有利不利を決められず、総合的に判断しなければいけない場合が多いでしょう。また、特定の層の従業員に不利益が集中するような場合、合理性が否定される可能性が高まりますので、その意味でも注意が必要です。

こうした様々なことを検討するため、弁護士にアドバイスされることをお勧めします。

3 金銭請求に関する紛争

金銭請求に関する紛争には、残業代の請求、未払給与や退職金の請求、労災に関する補償の請求など、様々なものが含まれます。

ここでは残業代の請求について説明します。

管理職であるから残業代は発生しない、という雇い主の言い分をよく見かけますが、必ずしも正しいわけではありません。

というのも、労働基準法上の労働時間に関する規定の適用が除外される管理監督者、つまり残業代が発生しない管理職は、範囲がかなり限定されているからです。管理職という肩書きがついているからといって、残業代が発生しないとは限らないのです。雇い主、従業員ともに誤解されていることが多いので、注意が必要です。

また、残業代は、細かい計算を要しますし、一般に広まっている固定残業代やみなし残業代なども、法律上は違法になったりすることもあります。

2015年には、「残業代0法案」とも評される日本型新裁量労働制が閣議決定されたり(法律は制定されませんでした)、2019年には「高度プロフェッショナル制度」が制定されたり、日々変化があるところです。

こうした流れに、弁護士や裁判所はかなり検討を重ねていて、日進月歩の分野でもあります。専門的なアドバイスが必要な分野ですので、残業代について疑問を持たれた従業員も、逆に、どう処理すればいいかお悩みの雇い主も、それぞれぜひご相談ください。