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2021年3月12日弁護士 川上 葵

交通事故被害者による後遺障害遺失利益に関する定期金賠償請求の可否

 令和3年3月12日、当事務所におきまして、交通事故被害者による後遺障害遺失利益に関する定期金賠償請求の可否をテーマとした勉強会を開催しました。

 これまで、下級審では、将来介護費については定期金賠償を認めるが、後遺障害逸失利益についてはこれを否定する判例が多数を占めていました(東京地裁平成18年3月2日判決ほか多数)。

 しかし、一審(札幌地裁平成29年6月23日判決)、原審(札幌高裁平成30年6月29日判決)及び最高裁(最高裁第1小法廷令和2年7月9日判決)は、後遺障害遺失利益に関して、定期金賠償の方法によることを認めました

 最高裁は、「交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害による遺失利益について定期金による賠償を求めている場合において、上記目的及び理念に照らして相当と認められるときは、同遺失利益は、定期金による賠償の対象になるものと解される」と判示して、後遺障害遺失利益の定期金賠償が可能であるとしています。

 さらに、最高裁は、「上記後遺障害による逸失利益につき定期金による賠償を命ずるに当たっては,交通事故の時点で,被害者が死亡する原因となる具体的事由が存在し,近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り,就労可能期間の終期より前の被害者の死亡時を定期金による賠償の終期とすることを要しないと解するのが相当である。」と判示して、特段の事情がない限り、定期金賠償の終期は就労可能期間の終期とするとしています。

上記判例をふまえ、実務においては、

  • 被害者は、長期間の賠償を求める場合、定期金賠償の方法を積極的に検討する(最高裁第2小法廷昭和62年2月6日判決、判例タイムズ638号137頁参照)。他方で、本判決は、被害者の障害の程度が重度であったところ、仮に、被害者の障害の程度が軽度だった場合、本判決の理由付けが妥当するかについては慎重な判断を要する。
  • 被害者は、長期間の賠償を求める場合、時的リスク(加害者本人の死亡、及び相続人の相続放棄等)に備えて、被告に、保険会社を加える。
  • 加害者は、就労可能期間の終期より前に被害者が死亡した場合に、その後の期間について後遺障害の変動可能性がなくなったことを理由として、被害者遺族に対し、定期金賠償を一時金賠償に変更する訴えを提起するおそれがあることに注意する。

という点を確認しておく必要があります。