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2019年9月 2日所長 弁護士 竹下 義樹

改元がもたらすもの

 「平成」の時代はほぼ30年で終了した。今は上皇となられた平成天皇の願いを受けての、代替わりによる改元の結果である。天皇の代替わりと改元によって、我が国の成り立ちや社会の動向が変わるものではないが、国民は、そこに何らかの意味合いを持たせたいと思っていることは確かである。
 
 1989年1月に昭和天皇が崩御されたことによって「昭和」は終わり、「平成」の時代を迎えたわけだが、振り返ってみれば、「昭和」と「平成」ではそれなりに異なる特徴があるのではなかろうか。私の思いつきと独断による特徴付けに過ぎないが、私は以下のように特徴付けてみた。
 
  1.  「昭和」は、20年近くにわたる戦争と敗戦を経て、日本国憲法の下での国づくり、戦後の復興と高度経済成長を含む資本主義の発展、自動車社会の到来とテレビ文化の定着、核家族化の広がりと地域社会(コミュニティ)の崩壊の始まり等を挙げることができる。それ以外にも指摘すべき特徴は多々あるのかもしれないが、それぞれの立場や価値観で分析してみてはどうだろうか。
  2.  「平成」の時代は現上皇がご指摘されているように、我が国としては「戦争のない時代」であったが、それは敗戦を経て成立した日本国憲法、とりわけその9条によってもたらされた結果であって、いわば昭和の後半の延長に過ぎないとも言えるのではないだろうか。経済的には平成はいきなりバブル経済からスタートし、その直後にバブルの崩壊と経済不況の長期化と低成長時代の到来、少子高齢化と人口減少の始まり、端末を含む携帯電話とパソコンの普及と進化、そしてAIの登場等を挙げることができるのではないだろうか。
  3.  実は、「昭和」にも「平成」にも特徴として挙げられなかったのが、民主主義と人権の発展ないし定着の問題である。日本国憲法が施行されてから70年以上が過ぎたにもかかわらず、憲法の柱の一つである民主主義と人権を巡る課題が山積し、未解決のまま「令和」を迎えてしまったのである。

 「平成」の途中に2001年を迎え、「21世紀は人権の世紀である」と評されるものの、平成の30年を通じて民主主義と人権の意識が高揚したとは言えそうにない。それどころか、特定秘密保護法の制定に見られるように秘密主義が広がり、他方で監視社会の進展によって個人のプライバシーが蔑ろにされてきているように思えてならない。しかも、経済的格差と貧困も広がり続けている。高齢者・障害者そして児童に対する虐待防止法が制定されても、そうした要配慮者に対する虐待も減るどころか増えているように思えてならない。

 それだけに、「令和」の時代を民主主義と人権の時代にするために、我々は何をすべきかが問われているのであり、私自身も何ができるかを今後考え続けていきたいと思う。